合意 | ナノ
(サスケと水月)
欲求不満なのだろうか?――近頃彼を虐めてばかりいる。
しかしどうにも止められないのだ。一度やってしまったら、あの感覚・あの表情・あの反応…忘れることなどできない。
昨日は泡を吹くまで首を絞めてやった。一昨日は吐くまで指を喉奥に突っ込んでやった。その前も、その前も…かれこれ一週間は続いている。
『戯れ』や『悪戯』と表現すれば凄味が足りないような気もするし、やはり、無難なのは『殺人未遂』だろう。
(これを彼との合意でやっているのだ。…凄いと思わないか?)
*
「水月」
「ん?なあにサスケ」
至って普通の態度だった。
昨日首を絞めてやったとは思えないくらい飄々とした態度だ。しかし首には『痕』がくっきり残っており、見る程に生々しい。
ソファーに寄っ掛かる彼に近付き、後ろから頬を撫でた。そのまま耳まで撫で上げるとピクリと身体が揺れた。
耳元で囁く。水月は耳が弱いから、耳を攻めればすぐ官能的な表情になる。
「今日は何したい」
――水月はそのまま目を閉じた。
*
「さすけ、くすぐった、い」
(くすぐったい…?)
首を絞めているというのに、なぜ『くすぐったい』なんだ?
目を細め、笑ってる。しかし苦しいのか、いや、苦しいだろう…口は半開きで、釣り上げられた魚のように身体中が痙攣を起こしていた。
くすぐったいなんてただの強がりだろう。本当は首を絞める俺のこの手が憎くて憎くて仕方ないはずだ。…でも俺自身は憎めない。
――愛しているから。
「水月……おやすみ」
「う、ん」
笑った。そのまま目を閉じる。
…今日は泡を吹かす前に気絶させてやった。開いたままの口に白色が彩られていないのが物悲しかったが、たまにはこんなのもいいだろう。
安らかに眠る(死んではいない)水月の表情を見たら、安心したから。
キスをする。痕だらけの首を優しく撫でながら。
(愛しているからこんなことをするのか?…だとしたら俺は相当おかしな性癖だ)
唇同士を重ねたまま、ふと考えた。
(ならば水月は?コイツはこんなことをされて、嫌になっていないだろうか?合意なんて言葉は所詮一時凌ぎでしかない姑息な真似だ)
唇を離すと、わずかに糸が引いた。反射して銀に艶かしく輝いたそれはすぐにプツリと切れたが、美しいと感じた。
……。
そういえば、水月は以前こんなことを言っていた気がする。それがきっとこんなことを始めた理由で、やめられない理由。
「サスケとのキスは好きだよ。でもずっとしてると、おかしくなりそうなんだ。ん?だってそれ以上のことを望んじゃいそうだからさ」
合意
20111029 欲求不満はお互い様だったな