すずらん | ナノ

(サソリとデイダラ)


何と言うことか。俺は既にこの日を迎えてしまっている。
茫洋としたこの部屋に、矮小な己が独りぼっちに佇む。(俺は、何をすればいい――?)
贈り物、など、初めてだから酷く戸惑っているのだ。
あいつは何が好きだろう。あいつは何が欲しいだろう。
…あいつもあいつで、今日は誕生日なのだと口にしないのが不思議だが。祝ってほしくないのか?

(まあどっちにしろ…俺の答えは決まらない)


すずらん


「デイダラ」
「ん?なんだいサソリの旦那?」
「買い物、行くぞ。さっさと着替えろ」

五月五日、朝十時。
戦いに備え起爆粘土を造る大真面目ヤローを無理矢理買い物に連れていく。普段そんなことしないくせに、お前も、俺も。
暁だとばれないような格好になり(とは言っても、上を脱いだだけだが)、アジトを出た。

今朝からの天気は良く、空気も澄んでいる。
デイダラの誕生日にしちゃあ良すぎな気もするが仕方ない。なんて、強がってはみるけれど、本当は雨なんか降っていなくてよかったと思ってる。

「よかったな」
「え、あ?ああ」

…何がなんだかわかんないくせに頷く。
俺はそんなに強圧的な雰囲気なのだろうか。デイダラがたじろいでる気がする。
普段からこんな感じなんで、もっと優しくなれと言われても治す余地はない。治せない。
でも、少しくらい優しくすることは出来る。


「着いたぞ」


――花屋だった。


「…?」

自分には壮大な誕プレなんて思い付かん。だからといって愛の言葉を囁くわけでもない。
そんなんで、花屋。ありきたりだけど、他に術はなかった。

…五月五日の誕生花は確か、鈴蘭。

「これ、ください」





「ほれ、」
「え?これってさっき買った…?」

花屋を出て、近くの公園に行き着いた。そこで先程買った花束をデイダラに投げる。
俺の買い物だったためか、自分に渡されるなど微塵も思っていなかったようだ。受け取った時の顔は焦っていた。
構わず俺は続ける、

「誕生日おめでとう。デイダラ」

と。

「……だん、な」
「驚いたか?はは、間抜けな面しやがって」
「……あ」

笑う俺に構わずデイダラは、今度は泣きそうな顔で言った、

「ありがとう」

と。

五月五日、昼十二時半。
先程、戦いに備え起爆粘土を造る大真面目ヤローを無理矢理買い物に連れていった。普段そんなことしないくせに、お前も、俺も。
そして渡したものがある。


「なあ、デイダラよ」
「ん…」
「腹、減ったろ。今日は俺が奢ってやるよ」
「…ほんとに?オイラもう減りすぎて倒れちゃいそうだよ」
「…今度は食い過ぎて倒れんなよ」
「アハハ」


今朝からの天気は良く、空気も澄んでいる。
デイダラの誕生日にしちゃあ良すぎな気もするが仕方ない。なんて、強がってはみるけれど、本当は雨なんか降っていなくてよかったと思ってる。

「よかったな。今日晴れて」
「え、あ?…うん!」





2011/05/05 あ、それ枯らしたらぶっ殺すかんな。

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