まるで家族のようだった | ナノ
(ペインと小南と自来也先生)
月明かりで目が覚めた。
時刻は夜中の二時――普段より三時間以上早い目覚めだ。
冬の夜は深く、山奥は静けさに包まれている。動物の鳴く声すらも聞こえない。
俺は窓から空を見上げた後、まだ傷が癒えていない身体を無理矢理起こし外に出た。
(苦しい…胸が、じりじりと痛む)
幾つもの『痛み』が俺を苦しめる。
――わかってはいるんだ。これは仮の姿であり、ペインである。そんなことは、鏡を見なくともわかる。
それ故に何故だか、いつも以上に意識してしまう。この『痛み』は……。
外はまだ肌寒かった。吐いた息が白くなり、すぐに消えた。
本当に呆気ない。
今度は溜息を吐くようにして、呼吸をする。
いつの間にか俯いていた顔を上げれば、目の前には小南がいた。
「いつからそこに…」「結構前から」
「ああ…そういえば、寒くないのか?」
「私は平気よ。それよりあなたこそ寒くないの?」
「少し肌寒いが、気にならない」
「…それに、先生との戦いの後よ。身体に障るわ」
しばしの沈黙。
"先生"とは、俺達の師自来也のことを指している。未だに先生なんて呼んでいるのは小南くらいのものだ。
小南はそれを言った後、はっとなって口を紡いだ。
気にしなくていいのにな…なんて思ったが、言わなかった。
だってそんなこと俺が言える義理じゃないだろう。自来也"先生"は、俺が殺したんだから。
「ペイン……」
「どうした?小南?」
「わ、たしね、思ったのよ。戦争孤児となった私達を拾ってくれて、忍になるための修業までつけてくれた先生は…」
「ああ…わかってるよ。わかってる」
「……」
今朝は晴れるか、雨が降るか。
段々と明るくなってきた空を見上げ、不意に思った。小南も見上げている。
――結果的に、降水確率は百パーセントなのだが。
「…晴れるといいな」
「…ええ」
たぶん、この『痛み』は『思い出』なのだと思う…。
生き方や忍術を教えてくれた"先生"との、小さな思い出。あっという間だったが、大好きな時間だったんだ。きっと。
(わかってるよ。わかってる……)
俺達は――
まるで家族のようだった
2011/04/13