似た者同士の無い物ねだり | ナノ

(サスケと水月)


何かを捜し求めるような、悲しい声。


似た者同士の無い物ねだり


えもいわれぬ頭部の痛みで俺は目を覚ました。
時刻はまだ夜も明けてなかったが、月の光で明るく感じる。俺は頭痛に舌打ちをしながら、覚醒してしまった身体を起こし外へ出た。

――何か、聴こえる。


ハミング?いいやそんな澄んだ声じゃない。
ならば泣き声?聴いたことのある、幼いようで大人びている声だ。
足を声のする方向に進める。
吐いた息は白かった。頭痛はおさまらず、痛みが増すばかりで…。

「だれだよ、」

呟いたら、泣き声はピタリと止んだ。俺の声に気付いたらしい。
啜る音がした。
聴かれたくなかったのか。堪えているようにも感じる。

月明かりがこちらを照らした。泣いていた主の顔が見える。


「水、月」





自然と頭痛はおさまっていて。

「なんで泣いてんだよ」
「…泣いてない」
「泣いてる声、聞こえたし」
「サスケは、なんでここにいるのさ」

沈黙。俺が黙ったのだが。
…答えがない、のかも知れない。なんで俺はここに来たんだろう。
頭が痛いから?泣き声が聴こえたから?

わからない。ただ、導かれるままに。

「…眠れなかったからだよ。わりぃか」
「べつに」
「なんで泣いてんだって。あとなんでお前もここいるんだ」

質問が多過ぎただろうか。今度は水月が黙ってしまった。
涙を拭っている。
その小さな横顔はいつもよりずっと幼くて。寂しそうで。

もしかして、毎夜ここで泣いているんじゃないだろうか。
何かに怯えて?何かを求めて?
なんて、妄想してみたが、こいつが涙を流してまで『何かを求める』ことなどするか?
でも、目が覚めた時に聴いたあの啜り泣く声は確かに『何か』を『求めて』いたんだ。
小さな身体は冷えていた。ずっとここにいたんだな。

「、なっなに」

水月がたじろいだが気にしない。抱きしめてやるくらい、いいだろ。こんな俺でもさ。
なんで泣いたのかはわからない。だから俺はこうするしか出来ない。

「身体冷えてるし。つか、泣くな」
「…泣いてないってば」

そっぽを向いて強がり発言。かわいくない。
無理矢理こっちに向かせて、涙で濡れている頬を舐めた。

「きたないよ」
「…んなことねえよ。ばか。泣きたいなら泣け」
「っ、ふ」
「なにが悲しいかは知らねえけど――」

言いかけて止めた。抱きしめる力を強くする。
水月が泣き出したからではない。聞こえたのだ。

『求める声』が。





2011/01/24 『お兄ちゃん』なんて、さ。

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