Inazuma | ナノ


▼ my sweet heart!!

 

「南沢さん、」

愛しい恋人の声を聞いて振り返れば、倉間は恥じらいながら両腕でカバンをぎゅう、と力一杯抱きしめている。初めてのデート故の初々しい姿がとても可愛らしい。
どうした、と聞けば「えと、その、」と言葉を濁す姿から、かなり緊張している様子が伺える。顔を俯かせ、目を泳がすその様は何か言いたがっているようである。
やがて、倉間がはっきり声を出した。

「手、繋ぎたいです」

振り絞って発せられたその言葉だけでも嬉しく思えた。俺はすぐに倉間の左手をとった。すると倉間はぎゅっと握り返してきて、俺のご機嫌は最高だ。きっと倉間も、言わないだけで心底嬉しいんだろう。あくまで俺の予想だけど。
いつもは遠距離恋愛だから、こうやって一緒にいられる時間も限られてくるのだから本当に寂しい。その分、久しぶりに会う倉間はずっと甘えてくるし、何より可愛い。その可愛さがまた俺の欲を掻き立てるというか。
手を繋いだまましばらくしていると、倉間が躊躇うように口を開いた。

「あの、南沢さん」
「ん?」
「俺、昨日、・・・速水に、告白されたんです」
「・・・・・・・」

一瞬俺の思考回路が停止した。・・・速水に、告白された、だと?速水の積極的さにも驚いたが、まずもってなんでそんなことを今言うんだ?俺はすごいショックを受け、倉間に「ちょ、どうしたんですか!?」と言われても声すら出ずに停止していた。いわゆる魂の抜けた抜け殻の状態である。呆然と突っ立っていると、耳元で「南沢さん!」と大きい声で呼ばれて我に帰った。

「そ、そんなに驚かないで下さいよ!?」
「いやいや・・・普通驚くだろ・・・」

え、倉間は俺が驚くとは思わなかったのか?あれなんでだろう、涙出て来そうだ。みっともないけど。とりあえず俺は「なあ、」と倉間に問い掛けてみることにする。倉間はすぐに「はい?」と返事をした。

「なんで俺にそんなこと報告したんだ?」
「・・・・・・・」

あれ、急に黙った。そして顔を俯かせたぞ。心配になって顔を覗いてみようとすると、倉間は「み、見ないで下さい」と手で覆って顔を逸らした。まさかと思い、隙を見て倉間の腕を引っ張れば倉間は驚いて抵抗を始めた。力量は俺の方が強いから、当然の如く俺が勝って顔を隠す腕を退かした。そして、ああやっぱりなと思った。
倉間の頬は耳まで紅潮していて、それが俺の理性に余計響いた。その顔で睨まれても怖くない、というか可愛すぎて自然と顔がにやけてしまう。

「なんだ倉間、あれか?俺を嫉妬させる為にあの話を振ったのか?」
「・・・そうですよっ、何か悪いですか!?」
「いーや全然、」



むしろそういうことする倉間可愛い。
本心で思ったことをそのまま口に出せば、倉間は肩をピクッと跳ね上がらせた後、すぐにプイッと顔を逸らして口早に「ほ、ほら、さっさと行きましょ!」と言った。その姿がこれまた可愛いもんだから、可愛い恋人を後ろからギュッと抱きしめた。



(み、南沢さんの馬鹿っ)
(何とでも言えよ)



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南沢そこ変われ←


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