ボカロパロ部屋 | ナノ


▼ ローリンガール

チェスターが気がつくと謎の空間にいたっていうよくわからない話です。
最後チェスアー。





孤独な者はいつまでも、届かない夢を見る。

例えどんなに手を伸ばしても、その夢に追いつけないのだ。



気がつくと俺は知らない場所に立っていた。どこだ、ここは。そして騒ぐ頭の中を掻き回してつぶやく。

「ここはどこだろう」
「ここは"世界の狭間"だよ。少しの間、君はゆっくりしていてほしい」

物静かな少女の声が聞こえた。
世界の狭間って、何だそりゃ。足元にあったヴァイオリンを肩に乗せ、いつの日かアミィに聞かせた旋律を響かせる。
「問題ない」とうわごとのようにつぶやいても、解決策なんて見当たらねぇ。そんなもの、むしろ誰か教えてほしいくらいだ。
さて、どうやって抜けだそうか。問題ないって言いながら、何度抜け道を探しても見つからない。ああもう違う、ここも失敗。そうやって間違い探しに飽きて、俺はその場で横になる。

もう一回、もう一回、俺は今日、この場所で転がるんだ。世界の狭間にそう語りかける。言葉になるべく深い意味を乗せて。

俺は聞く、「もういいか?」
世界の狭間が言う、「まだだよ、まだまだ先は見えないんだ」

そして息を一旦止める。



******



ただひたすら転がり、走る者の成れの果てにあるのは、変わり果てた世界の"裏側"だった。

「どうして、こんな様に?」
「世界が嘆いているよ。苦しいって」

重なった声が不協和音のように、耳の奥にまで鳴り響いた。

「大丈夫、問題ないよ」

世界の狭間はそう言うが、その声は完全に震えている。そして、言葉は一切紡がれない。
しばしの沈黙、破ったのは後ろから聞こえた謎の声だった。

「どうなったっていい、間違いだって起こして良いのだ」

いつの間にか真後ろにはガラス張りの坂道が出来上がっていた。そして謎の霧が坂道をはい上がり、俺に向かって手招きしているように見えた。

「待て!そいつには、ついて行くな!」

狭間の声で我に帰り振り向けば、向こうへと続くガラスの階段が現れる。俺は急いでその階段を上り始めた。後ろから霧がじりじりと追いかけてくる。
頼む、どうか、走らせてくれ!そう心の中で叫び続けた。声が出ない。無口のまま階段を上り続ける。そして、やっと声に出た。

俺は聞く、「もういいか?」

世界の狭間が言う、「もう少し、もうすぐ、何か見えるだろうから」

俺は安心して走り続け、霧との距離を離していく。そして俺は向こうに手を伸ばし、「あと少しだ」と心の中で叫んだ。



次の瞬間、向こうから階段が崩れ出した。



一気にふわっと体が軽くなった気がした。今俺は、重力に従って下へ落ちていっている。
俺は意識を手放す前に、狭間に話しかけた。

「もう、いいか?」

「もういいよ。そろそろ君も疲れたろう、ね。」



*******



「チェスター!」

聞き慣れた声を聞いて、我に帰って飛び起きた。
・・・飛び起きた?
周りを見渡す。いつもの部屋。俺はベッドの上で寝間着姿。時計の針は8時を指している。
正面には、アーチェ。

「もう、チェスターってば。目覚まし鳴っても起きなかったからびっくりしたよ?」
「ああ、わりぃ」

あれは夢だったのだろうか。下ろした前髪をバサッと掻き上げ、すぐにベッドから下りる。鏡の前で髪をいつも通りに結んでからアーチェと一緒に部屋を出た。食堂に向かう途中、頭の中に声が流れた。



ヴァイオリン、誰かに聞かせてみなよ。特に、今君の横にいる彼女さんとかに

夢じゃなかった。
つか、こいつ完全に冷やかす気満々だな。なんか腹立つ。・・・とはいえ、今日ぐらいは許してやることにした。怒る気、全然起きないし。



―――――――――――
ローリンガール/初音ミク

世界の狭間というのはルミナシアとエラン・ヴィタールの間のこと。
つまり声の主はラザリスです

 



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