六ろ親子パロ
庭付きの広い一軒家である我が家には二人しか住んでいない。働き盛りの父親と中学生の自分だけの生活は案外快適なものだ。母親は数年前に事故に巻き込まれこの世を去った。それからというもの、いつも母親任せで何も出来なかった俺はまず家事を覚え、家計をやりくりするようになった。父は俺が作った料理が段々上達していくのを食べて実感するのが好きなようだった。父は食糧品の営業マンで朝早く出て夜遅く帰ってくる。俺もそれに合わせて起きて朝食と弁当を作る。すべては父の健康と節約の為だ。たまに早く帰宅する時は俺の好きな店のケーキを買ってきてくれる。甘さ控えめなモンブランにふわふわな生地とほんのり甘い生クリームのロールケーキ、沢山の大粒苺を使ったタルト。父が買ってきてくれるケーキはどれも最高においしかった。そして俺は今の生活を気に入っている。
「ちょーじー!私のネクタイピン何処にあるか知らないか!」
「…洗面所の鏡の前だ」
「えっ、あー!本当だ!ありがとな」
しっかりした様に見えて意外と抜けてる元気だけが取り柄な父と甘党で本の虫な俺。全く似てない親子だけど何も問題なく日々は安定している。そうだ、こんな生活も悪くないだろ?
「長次!今朝の卵焼きは絶品だった!」
「…そうか。父さん、ネクタイが曲がってる」
「うぉっマジか」
「…これで大丈夫」
「サンキュー長次!行ってきます!」
「行ってらっしゃい。気をつけて」
七松さん家の日常
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