いっしょに帰ろう




「ナマエ!帰り遊んでこ!」
同じクラスの友達が机を取り囲んだ。
「え〜ごめん無理なの」
ごめんね、とiPhoneを持ちながら顔の前で手を合わせると、目の前の子が眉をひそめた。
「最近付き合い悪すぎ」
「ねえお願い、今日ナマエ混みで合コン組んじゃったの〜」
「この前もドタキャンじゃん!いー加減向こうも待ちくたびれてんの!」
ドタキャンってあんた…わたし行くなんて言ってないでしょ。
手の中のiPhoneがブルブル震えた。パネルには『パパ♪』の文字。
心が弾む。胸がわくわくする。
「だって今日からパパ帰って来てるんだもん!」
顔のにやけも気にしないで言った。
周りが一斉に脱力する。
「出たよパパ」
「イケメンだよね〜うちなんかさー」
「もう行こ。パパは仕方ないよ」
「テコでも動かないもんね」
そう言って、呆れつつ笑いつつ席を離れてく。
「今度合コンにパパ被ったらパパ混みでお店連れてくからね」
わお恐ろしい。
彼女達が教室を去ってから、さっき来たパパのメールに返信をして、前にパパが褒めてくれた香水を付けて鞄を肩にかけた。
途中トイレで前髪とメイクを軽く整える。
よし、かわいいかわいい〜…たぶん!自分の顔の評価とかよくわからん!
私はイギリス人のパパと日本人のママのハーフだ。
だから周りの子みたいに染めなくても地毛がココアベージュだし、二重はぱっちり、背もそこそこ高め。
でも彼女達の、光を綺麗に反射する、サラサラな黒髪にもすごく憧れているし、何より顔立ちが可愛い。
いいなぁ。わたしもママみたいな顔が良かったな。だってパパが恋したんだもの。もやっとしたものを抱えながら納得するまで髪の毛を整え、トイレを後にした。
走ったらせっかく整えた前髪がパーになっちゃうから、できるだけ早く廊下を歩いた。
靴を履き替えて校庭に出ると、パパとは似ても似つかない男の子ばっかりが部活を頑張っている。
彼らをかわしながら校門まで近づくと、大好きなパパがいた。
「パパ!」
もう、歩いてなんかいられない!
駆け寄ると、周りには先ほどの友達がいた。
「きたぁ」
「遅いよナマエ」
にやにやしながら私を見ている。
慌てて前髪を整えた。
「おかえり」
パパがにっこり笑って、私の肩にかかった鞄を受け取った。もうパパったらほんと素敵。
友達が一斉に冷やかしてくる。もう!これがパパのデフォルトなの!!
「たっただいま!」
私がパパのところまでくるのを待っていたのか、友達は「お幸せにい〜」と歩き去っていった。
無駄に恥ずかしい。
「帰ろう。今日は外食したいってママが言ってたよ」
「ほんとに!?楽しみだなあ」
パパがすっと開けた腕に、私の腕を絡めて歩き出す。
ああ幸せ。
斜め下からのアングルのパパも、すごいカッコいい。あんまり帰路にいちゃつく人が居ないからか、通りゆく人がけっこうちらちら私たちを見て行く。
「日本だとパパ大注目ね」
「こんな可愛い子連れてるからね。オジサン達に羨ましがられてるんだよ」
もう、パパったら。
パパの言ってくれる可愛い、が一番嬉しい。
「友達も、みんなパパのことハンサムだって言うわ」
「そりゃ、ナマエのパパだからね。お姫様が可愛ければそのパパだってカッコ良くなきゃ。そうだろ?」
「私、パパが王子様になってくれればって思うの」
「パパはもう王子って年じゃないからなあ。そういえば、さっきの子達に合コンに誘われたよ」
パパとの楽しい会話が曇り始めた。パパはお祭り好きだから、彼女達の楽しそうな話を聞けば行きたいって思うかもしれない…!
「パパ…行くの?」
パパはちらっと私を見て、悪戯っぽく笑った。
「ナマエがそんな顔するんじゃ行けないな。それに、ママに殺されちゃうかも」
「たぶん私も加勢するわ」
そう言うとパパはからからと笑った。
「ねえ、お家ついたらキスして」
「そんなんじゃいつまでたってもボーイフレンドできないぞ」
ぐさり、とパパの言葉が刺さる。
「パパがカッコよすぎるからいけないの。それに、今の好きな人はパパだわ」
「今の、じゃなくて、生まれてからずっとだろ」
少し恥ずかしくなって、顔が熱くなった。
でもこの様子ならキスしてくれそう。
お家着くのが楽しみだな。
その夜、パパのお土産にはしゃいでる時に、頬に小さくキスされた。
不意打ちはずるい。ドキドキが味わえないならキスの魅力が半減しちゃう!
そう訴えると、パパはウィンクをひとつしてまたからからと笑った。


 

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