50音短編企画/日焼け



※本番ないけど裏っぽいです。
閲覧は自己責任でお願いします。








「………げ、なに、これ」

やばい。非常にやばい。
洗面所兼脱衣所で、服を脱いで何の気なしに鏡に写った自分を見て、わたしは文字どおり真っ青になった。

元々人より白い素肌が割と気に入っていた。のに。今はどうだろう、くっきりと水着焼けしている。まだ赤いけど、明日になればだいぶ黒くなるだろう。これは非常にまずい。


今日は中学の時から仲のいい女友達5人と海水浴へ行った。うちふたりはすでに結婚しこどももいて、上は4歳下は1歳の4人のこどもたちも含めるとなかなかの大所帯だった。バーベキューにスイカ、そして海。こどもたちの相手をしながら、どれもとっても楽しかった。素敵な夏の思いで。と、そこまではいい。いや、なんていうか、良くない。本当は行ってはいけなかったのだ。

私の彼氏は同い年で、同じ祓魔師だ。明陀の僧正の跡取りで、将来有望且つ人望もありとても優しく、更に見目もすこぶる麗しい。おまけにこども好きとくればもう言うこと無しな最高の恋人だ。が、私の事となると少しネジが緩んでいるようで、とにかく盲目的と言っても過言ではないほど愛されている。自分で言うくらいだからほんとにすごいのだ。そんな彼に常々言われていた半ば強制ともいえる約束は、「他の男の前で肌を晒すな」。わたしは思いきりこれを破ってしまったのだ。

いや、言い訳が許されるなら、これはすごく急だった。突然非番になることになり、当然ながら柔造は仕事でわたしは予定もなくて。家でゴロゴロしながら友人に電話してみたら、「え、休みなの?!じゃあ来なよ!」と誘われたのだ。水着は柔造と買ってあったし、早く着たい気持ちもあってすぐ家を出た。去年柔造や廉造とプールに行った時の日焼け止めを塗ったのが悪かったのか、どうやらあまり効果がなかったらしい。柔造が買ってくれた白のビキニはやっぱり可愛くて、なんかものすごくはしゃいでしまった。反省。


「いやあ…ほんまにこれはないわ…」

鏡の前で項垂れても事態は良くならない。とりあえず出来る限りのケアをして、海で疲れた身体は心地好く眠りにはいったのだ。



が。



「ん、……ん?」
「おう、起こしてしもたか」
「柔造…」

まだ暗い部屋で寝ぼけまなこに写ったのは、優しく笑う柔造。彼は合鍵を持っているけど、翌日が仕事の日にはまず来ない。珍しいな、会えて嬉しいなあ……あ。

そこで一気に覚醒する。まずい。肌を見られてはまずい。


「まだ10時やで?寝るん早いな」
「あ、あ、うん、まあ」
「……どないした?」
「え?いや、べつにどうもせんよ?柔造、明日も仕事やろ?寝んとあかんのちがう?」
「明日半休もろてん」
「あ、そうなんや。そら良かったねえ」

どうしようとりあえずどうしよう。
柔造がじとりと私をみている。まずい。


「…とりあえず、電気つけんで」
「あああああかんっ」
「え?」
「いや、あ、あーと、」
「……どないしたんや、お前。つけんで」
「や、っっ!」

ぱあっと明るくなる部屋。咄嗟に潜ったタオルケットを、べりっと剥がされて。


「………★、お前」
「………ごめんなさいいっ!」

もう逃げも隠れも出来ん。わたしは思いっきり頭を下げることにしたのだった。


「ええから、顔あげ。お前それ…日焼けやんな?」
「はい…あの、今日、なっちゃんたちと、海、
に…」
「海?」
「あああの、朝たまたまなっちゃんに電話してみたら、子どもら連れてみんなで海行きよるからどおやーって、誘われて、それで、」
「それでなんでそないに隠して……まさかお前」

私の反応に怪訝な顔をしていた柔造が、はっと気付いて私のタンクトップの肩をずり下げた。もちろん抵抗するまもなく。


「……水着、着たんやな?」
「……はい」
「……」
「……」

ああああどうしようっ、もう、柔造の顔が見れない、っ。


「…成る程」

二の腕辺りを掴んでいた手が離れて、どうしたのかと顔を上げた、瞬間。


「……っ、」

ものすごく怒っていると思われる柔造に、押し倒されていた。



「あん水着か?」
「……うん」
「さぞ似合うとったやろなあ」
「……あ、あの、柔造」
「なんや?」
「ごめんな、っ!!」

謝罪の言葉は、噛みつくようなキスに食べられて飲まれた。


「……謝られても、やめてやれんわ」
「へ、な、何を…?」
「そないな目ェで見て、ほんまやらしいなあ」
「ちが、」
「違わんやろ?浜におった男のこともそないな目ェで見よったんか?」
「ちがう、!」

完全に怒ってる。さあっと血の気が引く感覚。柔造だけは怒らしたらあかんのに。


「脱ぎ」
「え、」
「早う、出来るよな」
「……っ」

ああ、だめだ。逆らえない。
震える手でタンクトップを脱げば、寝ていたわたしは下着もつけていなくて。促されるままに、ショートパンツも脱ぎ捨てる。


「思いっきり、焼けてんなぁ」
「……」

私を見下ろす柔造の視線が熱い。


「こないな際どいとこまで、他の男に見せたんやな」
「っ!!ち、違う…」


日焼けと素肌の境目を、ひどく優しくなぞっていく彼の指。ぞくぞくと背筋を駆け抜ける感覚。


「違わんよなあ?何人に声、かけられてん?」
「か、かけられてなんか、」
「ほんまのこと、言えるよなァ」
「……え、と、3組…」
「組てなんやねん。何人かて聞いてんのに」
「ふたり、ずつ…」
「ほお、6人か」
「でも、私やなくて、一緒に居った子ぉに、っ」
「言い訳すなや」
「っああ!」

途端に胸の先端を摘ままれて、その容赦ない力に声が大きくなる。


「そん男らに、こんなエロい身体見せたんやな」
「ちが、ああっ、ん、」
「お前着痩せしよるからなァ。華奢なくせしてエロい胸しとるから男を引き寄せるんやで」
「あ、やめ、柔造…っ」

加減をつけずにどんどん攻められる胸が熱を持っていく。


「そん男ら、今ごろお前の身体思い出して抜いてんとちゃう?」
「ば、ばか、あ、んっ」
「バカちゃうやろ。お前の身体が悪いねんからなあ」
「や、んっ」

口に含まれ、指で捏ねられ。嫉妬をむき出しにする彼にまで欲情するわたしは、やっぱりはしたない女なのだろうか。
火照る身体が彼を欲していく。
そんな私の変化を見逃すほど、鈍い彼ではもちろんなくて。




「我慢でけへんのやろ?★。もう下、脱ぎ?」
「………っ」

もう期待に満ちてる、わたしはやっぱりはしたない。








日焼け
(嫉妬だってスパイスでしかなくて)





「も、 許し、」
「あかんあかん。お前にはよーく教えたるわ」
「も、無理や、って、……っ!」
「無理なことないわ、お前は誰のもんか、よう学ばな」
「柔造、っあ!」
「なあ★、目ェ閉じてええなんて言うたか?」





20120804





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