prologue






現パロ/ややキメ学軸
かなり特殊設定の為ご注意








時は令和。移ろいゆく時代とともに、鬼だのあやかしだのは空想の産物として面白おかしく語られるようになって久しい。然しながら現代に於いて尚、異形としか言いようのない人間ではないナニカが存在する事を知る者は決して多くない。

真夜中のオフィス街。外灯が寒々しくも眩く照らし出す人気のないアスファルトの道を、音も無く駆けていく小さな影。そしてやはり音ひとつたてず、突如人間離れした跳躍を見せる。両手に握られているのは刀だ。勿論、模造刀ではない。峰が青く輝く真剣である。小さな影が夜気を切り裂くように刀を振るうと、その剣技は流麗な水の幻を纏う。着地と同時に灰のようなものがわずかな風に舞って、そして消えていった。この世の物とは思えぬ断末魔とともに。


「…ふぅ、」


小さく息を吐いてパーカーのフードをぐい、と脱げば、長い黒髪がふわりと踊った。真っ黒いパーカーに真っ黒いスキニー、スニーカーまで黒い。彼女は顔の半分を覆っていたこれまた黒いマスクを指を掛けて顎にずらした。まだ若い女である。


「あ?なんだお前女か」
「っ、誰、」


不意に降って湧いた男の声に、女が振り向く。
なんの気配もしなかったはずなのに、そこには大柄な男がポケットに両手を突っ込んで立っていた。彼もまた、彼女と似たような真っ黒な服装で。


「びびらしたか?悪い」
「…誰」


ちっとも悪びれずに笑う男は随分と美形だ。
彼女は眉間に皺を寄せ、外しかけていたマスクで再び顔を覆った。


「綺麗な顔してんだから隠すなよ」
「…」
「あーはいはい怖い怖い。俺も鬼狩りだ。宇髄天元。聞いたことねェか?」
「宇髄…」


マスクの中で小さく復唱する。宇髄、そういえば聞き覚えがある。


「お前、苗字だろ?噂は聞いてる」
「…何か用」
「今や鬼狩りは希少だからさ、仲良くなれねェかなって思っただけ」
「……必要ない」


派手に冷てぇな面白ェ!
目の前の大男は至極楽しそうだ。彼女は不機嫌さを隠しもせずに言い捨てる。


「暇じゃないの。さよなら」
「……いいなそれ。なんか今グッときた」


目を見開いたかと思えば、なんとも悪そうに笑む大男。関わり合いになるべきでない、と彼女は判断する。夜が明けるまでまだ忙しい。
踵を返して再び音もなく走り出す。走りだした、はずだった。


「逃げんなよ」
「…っ、は?」


数メートルは離れていたはずの宇髄が、彼女の手首をしっかりと掴んで至近距離に立っていた。


「ちっと面倒な鬼が居てな。共闘してもらえねェか」
「…嫌と言ったら」
「んー?そしたらとりあえずこのままお持ち帰りしちゃおうかなと」
「…っ痛、」


口角を上げて微笑むその表情とは裏腹に、宇髄の大きな手が彼女の手首をぎりぎりと締める。


「…離して」
「お、やったね交渉成立?」
「今夜はまだ行くところがあるから、話は昼に」
「オッケーじゃLINEと住所教えて」
「……住所は嫌」


ぱっと彼女の手を離して宇髄がスマホを取り出す。彼女は溜め息を隠しもせずに、それでも同じようにスマホを取り出した。


現代に於いて尚、鬼は存在する。そしてそれを狩る鬼狩りもまた存在する。日輪刀と呼吸を駆使して、市井の人々を陰ながら守る謎に包まれたその存在は、決して表に出ることはない。
昼間は一市民として生活し、夜は闇に紛れて鬼を狩る。中には組織化している鬼狩り達も居るが、宇髄や彼女のように単独で鬼と渡り合える力を持つのは大抵が前世からの鬼狩りだ。
人気のない真夜中のオフィス街に、煌々と灯る外灯がふたつの影を作り出す。視線がかち合う。互いに、まだこれが長過ぎる鬼殺の運命を変える出会いであるとは気付かない。





prologue




「それでは、今日から臨時でお世話になる講師の先生を紹介するね。苗字名前先生です」
「初めまして。苗字と申します」

「……はあ?」
「ん?なんだ宇髄!知り合いか?」
「あー、んー、まあ」
「君にあんな美しい知り合いが居たとは!」
「うるせぇよ煉獄」
「ぜひ紹介して頂きたい!」
「…いや、あれは駄目だ」
「むう、何故だ!」
「何故ってお前…なあ…」











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