「ふああ〜…気持ちええわあ」
「今日は風あるからなあ」

志摩家の縁側でぐーっと伸びをする。抜けた声が出て、隣の柔造に笑われた。幼い頃からマンション住まいのわたしには、こんな縁側がとても新鮮だ。照り付ける太陽は暑苦しいけれど、今の時間はここは日陰だし、風が抜けてとても心地好い。

ちりん、

風が吹く度、涼しげに風鈴が鳴る。


「ねえ、柔造」
「ん?」
「なんや眠くない?」
「…お前だけや」

呆れたように笑う彼と目があって、にこりと笑えばわたしの心中を読まれたようで。


「…しゃあないなあ」
「おおきに」

言外のおねだりをわかってくれて、笑ってくれる柔造は本当に優しいと思う。
せやからモテるねんけど、あんまり他のひとに優しくしてほしくないなんて、可愛げないこと言えへんけども。


「んー、気持ちええ…」
「そら良かったな」
「うん…」
「少し眠り」

柔造の膝枕、すこし固いけど、すごく幸せだ。彼の浴衣から大好きな香りがして、風が吹くと、ちりんと涼しい音がする。


「好きやで、柔造」
「俺かて、★が一番好きや」

心地好くて、睡魔に負けながらとろける思考が素直にさせる。大きくて暖かな手のひらを頭に感じながら、わたしはゆっくり目を閉じた。





ちりん、ちりん
(ふたりきり)




「…んん、」
「お、起きたか。よお寝たな」
「え?もうこんな時間?…体、痛い」
「当たり前や縁側なんかで熟睡しよって」
「痛たたた 、……柔造」
「…しゃあないなほんま。ほら、おぶさり」




20120613









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