私はいつもとっても恋愛下手で、報われない恋ばかりしていた。所謂ダメ男にばっかりひっかかったり、妻子持ちの男性に片想いしたり、挙げ句の果てに遊ばれてしまったり。それでいつもいつも最後は泣かされて、いつもいつも行きつくのはこの日本家屋のなかの一室。ギターやバンドスコア、ピックケースが散らかるその部屋の主は、今日もまぶしい金髪だ。


「で?今日はどないしたんや」
「……お前なんて本気やなかったって」
「ハァ……こないだ阿呆みたいにはしゃいどったデートの奴か」
「あほ……はい、そうです…」


ちっとも隠すことなく盛大な溜め息をついた幼なじみで腐れ縁の金造は、小さい頃からいつも私をバカにしながら、なんだかんだ守ってくれる存在だった。私もバンド好きでボーカルやらギターをちょこっと弾いたりしてたから話も合って、一人っ子の私にはほんとに兄弟みたいな奴だ。
阿呆で熱くなりやすくて、明るくて太陽みたいな金造には、なんでも話すことができる。


「本気やなかったって、ヤリ逃げでもされよったんか」
「ヤっ……まあ、きっとそうするつもりやったんやと思うけど…」
「されへんかったん?」
「し、してへんよ!その、するんやったら、ちゃんと気持ち聞きたいねんって、言ったら、……」
「めんどくさい言われたんやろ」
「まあ、そんなもんです、はい…」

尻すぼみになりながら、彼のことを思い出す。
誠実そうで、この人となら幸せ掴めるかも!なんて金造にも息巻いていたのは記憶に新しい。
それが1ヶ月足らずでこの様だ。

ああ、もうほんま私はどうしてこんなに阿呆なんやろう。


「…もう、忘れえ」
「……出来んよ、そんなすぐ…」

呆れてるはずなのに、金造はちゃんと優しく言ってくれる。


こんな風に泣き付いて、話を聞いてもらって宥めてもらうのはもう何回目だろう。最初は「どこにおるんやそいつ!俺のこの錫杖でドつきまわしたるわあ!」って飛び出していくのを急いで止めたりもしてたのが、少しは大人になったのか私の話の聞き役に徹してくれるようになったのはいつからか。
でも私は少しも大人になれなくて、やっぱり同じことを繰り返している。



「なあ、★」
「うん?」
「お前の恋やから、俺がどうこう言われへんけど」
「…」
「そろそろ落ち着かれへんか?」
「え、」

珍しく神妙な面持ちで、ゆっくり話す金造。あ、そんな顔してたら柔造さんにそっくりや、とか考えてたら、放たれたのはそんな言葉で。
落ち着かれへんか、って、もうやめてほしいってことやんな?さすがに金造ももう呆れ果てたんやろか。こんな役回り、確かに何も得せんし、嫌になってもおかしくない。でも金造は兄弟みたいだから、いつもそばにいてくれたから、なんでも話せて、

……そう思ってたんは、私だけ、?



「金、ぞ…」
「★が俺のよう知らん男に泣かされてばっかりいるんは、俺もう耐えられへん」
「え、あの、」
「お前がやめぇ言うから聞くだけにしとったけどな、お前がそうやって泣かされたり傷つけられたりしてんの見るたびに、そいつぶん殴りたくなる。もうそんなん嫌なんや」
「それ、って…」
「お前のこと一番わかっとる男は俺や。違うか」
「ち、ちがわへん…」
「そんならええ加減、俺に落ち着きや」


頭がついていかなくて、オーバーヒートしそうなところで視界から金造が消える。あれ、と思ったときには、しっかり抱き締められていて。


「金造…あかん」
「あ?」
「ドキドキして、死にそうや」
「……死なすか阿呆」




ベタだけど、
(ずっとずっと君が好きでした)



「よかったなあ〜金造」
「おげッ、柔兄?!」
「あ、柔造さん」
「★ちゃん、金造に泣かされそうになったら俺んとこ来るんやで」
「何言うてんのや!俺が泣かすわけあらへんやろ!俺が何年片想いしとったと思てんのや!」
「…え?」
「あ、」
「いやあ、ええなあ若いって」



20120607









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