「ふあ…」
春眠暁を覚えず、とはよく言ったもので、この陽気にわたしは身体ごととろけそうな眠気に包まれていた。
ぽかぽか暖かな空気は、春の香りをふんだんに含んでいて柔らかい。お日様の匂いと、どこからか混ざる微かな花の香り。そして僅かに香るい草の香り。時折聞こえる小鳥のさえずりとこどもの声。なんて平和なんだろう。四季があるとは素晴らしい。うん。
「なんしとんのや、★」
「…ん?」
とろとろと微睡み始めたところで、ちょっと呆れたような、笑ったような、困ったような声がした。
「柔造」
「家に居らんと思うたら、うちに居ったんやな」
「んん、来てみたらおばさまが、私も出るさかい★ちゃん留守番頼むわーって」
「ったくお母は…息子の恋人なんやと思てんねやろ」
「ええやん、私も柔造待つ気やったし」
「お前ん家まで行ってもうたわ。メールくらいいれとき」
「ん、ごめん」
会話の合間にも柔造はうつぶせに寝転ぶわたしの隣へやって来て、ぽかぽか日向と眠気であたたまったわたしの隣にごろりと寝転んだ。
「ここ、気持ちええね」
「おん、昼寝には最高やろ」
「柔造も一緒にお昼寝する?」
「んー、休憩する」
わたしの背中に回る腕に誘われて、柔造にぎゅうと抱き着く。
外から帰ったばかりの彼は、春の香りに包まれていた。
「おつかれさま」
「おん、きょうは半日やったさかい、そないに疲れてへんのやけどな」
「そう?」
「そやねん、けど、なんかめっちゃ眠い」
「ふふ、わかる」
「春やからなあ…」
ちゅ、とやさしく触れ合ったくちびるは暖かで、気持ちいい。
頬や耳元に落とされるやさしいキスが睡魔を引き戻して、わたしは微睡みに落ちていった。
春のまどろみ
(おひるねしましょ)
「たーいまー…誰もおれへんのか?……っどぅえ!!??」
「ただいまー!あれ金兄なんしとん」
「廉造ゴルアァ!」
「痛ってえ!なんやねんなんで俺ただ帰ってきただけで殴られなあか…ん……なんあれ」
「なんっで客間で柔兄と★が抱き合って寝てんねん!」
「いや俺知らんけど…客間日当たりええからやない?」
「だからってな…!」
「それにしても★ちゃんはまだしも柔兄もよう寝とるわあ。あんなにがっちり抱き合って…って柔兄の片足★ちゃんの脚の間に入ってるやんか!挟まれてるやんか!むっちゃ羨ましいい…!」
「黙れや変態」
20130410