「★せんぱぁい、お早うさん」
「あ、廉造くん、おはよ」
「今日もほんまかいらしわあ。放課後デートせえへん?」
「そんな暇ありませーん」


いけずぅ、と唇を尖らせるピンクブラウンな彼は、高校の後輩の廉造くん。学年が違う私たちは本来なら何の接点もないのだけれど、秡魔塾の塾生というすこし特殊な共通点があるのだ。


「ええ?放課後そんなに忙しいんですの?」
「塾があるもん」
「ほんなら塾の後でも!」
「復習しなきゃでしょ」
「なんやねん★ちゃんまで坊みたいなこと言わはって〜」
「廉造くんも勝呂くんを見習ったら?」
「あかんあかん、俺は復習より★ちゃんとデートしたいんやもん」
「はいはい言ってなさい」


この子は超が付く女の子好き。だから私たちのこんな会話も日常茶飯事だ。


「じゃあ、またね」
「おん、今日も★ちゃんのこと考えて頑張るわあ」

すらすらと出てくる口説き文句に、最初こそ戸惑ったけど。今はすっかり慣れて、笑いながら返せるようになった。
だから今日もHRが始まる頃には、もうすっかり忘れていた。

















お昼前。先日交換したばかりの廉造くんのメールアドレスから、メールが届いていた。『今日坊も子猫さんも用事あるとかでお昼孤独です!★ちゃん、かわいそうな後輩を助けたって!』という文と涙を流す顔文字付き。しょうがないなあ、と一緒にお昼を食べる約束をした。

『おーきに!ほんま嬉しい!』と今度は笑っている顔文字に、思わずくすりと笑みが漏れる。
ほんとに弟みたい。一人っ子のわたしには新鮮で、素直に可愛かった。



「うわ、お弁当?!」
「うん、たまには自炊」
「めっちゃ美味しそうやんか!ちょ、玉子焼きちょうだい?」
「えーしょうがないなあ、はい」
「え?あーんしてくれはるの?!」
「ちょ、うるさいから早く食べて…」


陽当たりのいい中庭の木陰。暑くなく寒くなく、風が気持ちいいお弁当には最適なスポット。購買部のパンを持ってきた廉造くんは、私のお弁当に泣きそうなほど目をきらきらさせていた。


「めっちゃ旨いやん…」
「そう?よかった」
「俺、やっぱり★ちゃんと結婚するわ〜こない美味しい玉子焼き食べられるとか最高やもん」
「あはは、大げさだなー」

とろんとろんに溶けた廉造くんは私より背が高いのにほんとに弟みたいだ。かわいいやつめ、玉子焼きひとつでこんなに感動するなら、今度お弁当つくってあげようかなあなんて思った。






「そっか、勝呂くん相変わらず頑張ってるんたねえ」
「坊は最早変態やもん、俺ついていかれへんわ」
「あはは、それ勝呂くんに言ってもいい?」
「や、あかんてそれは!」
「じゃあそんなこと言わずに少しは見習ったら?」
「ええ〜それは無理やわ」

午後の太陽が木漏れ日となって廉造くんのピンクブラウンをゆらゆらと照らす。きれいだなあ、


「…★ちゃん?」
「ん?」

綺麗だから、つい手が伸びて。
廉造くんのさらさらの髪を、指ですいていた。やっぱり気持ちいい。


「なにしとん?」
「なでなで?」
「…敵わんなあ」
「うん?」

お腹はいっぱい。気温はちょうどよく、風はそよ風。さらさらのピンクブラウンは手触りも抜群。
はあーかわいいなあ、廉造くん。



「なあ。」
「んー?」
「キスしてもええ?」
「んー?………ん?」
「せやからぁ、」

隣の廉造くの髪を撫でながら、聞き流しかけた言葉にどきりとする。聞き返したところで、きこえた返事はなぜか耳元。


「俺も男やねんで?」
「れん、」

肩を抱き寄せられている、と気付いた時にはもう、


「……んっ、」

かわいい後輩の唇が、わたしのそれに重なっていた。



「……かいらしなあ、ほんま」
「れ、れんぞ、くん、」

にやりと笑った彼は、かわいい後輩なんかじゃなくて。






かわいい?
(ゆだんしてたら、たべちゃうよ)





「くォら志摩ァ!!!」
「うげっ、坊?!なんでいはりますの、痛たたたた」
「お前はどうしても外せん用事がとか言うて先輩に何しとんのや!」
「何って、キスですやん〜痛いですわ坊」
「キっ、お前は何遍でも往生せえ!!」
「痛っ!ちょ、坊やめ、痛たたた!だいたいなんで坊がここに居はるんですの」
「坊は★先輩と志摩さんが見えたんで心配で来はったんですよ」
「子猫丸!余計なこと言わんでええねん!」




20120620









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