※之芭ユメじゃなかった。トリオユメにすらなってない予感 「初詣行こう!」 大晦日の夜。浦原商店でちいさなテレビをみんなで囲んでまったり蕎麦を食べ終わったときでした。今年も白組が勝ったというところで、このタイミングが最良だと思って私は言ったんだ。なのに浦原さんは。 「いってらっしゃーい」 語尾に音符を飛ばさんばかりに、浦原さんは私をお外に放り投げた。みっつのぬいぐるみと共に。 「さむいいいいいいいいいい!」 「寒そうですねえ!」 「そりゃあ寒いでしょうね」 「…問題ない」 ひとり絶叫したのは私だった。ああ問題ないでしょうねぬいぐるみの方々は。カタカタと震えながら近所の神社まで健気に歩く私、の腕の中におさまっているだけですしね。ぬいぐるみ(やや不細工)をみっつも抱えてひとりで初詣とかはたから見たら痛々しすぎる。しかも話しかけている。何この寂しいかんじ… 浦原さんは言うのだ、たこ焼きと焼きそばと林檎飴2つ、イカ焼きも忘れずに。 そしてぬいぐるみをお供につけられました。之芭だけでよかった。荷物増えてるだけだし。(たぶん、蔵人とりりんがとてもうるさかったので押し付けられたんだとおもいます。) 「今何分?」 りりんが聞くのでポケットから携帯電話をとりだす。かじかんだ指でディスプレイを開くと。 「…あ」 「どうしましたー?」 「あけましておめでとうございます」 日付はもう1月1日になっていて。 「…おめでとう」 「本気で言ってるのー!?」 「カウントダウンできませんでしたねぇ!」 なんて適当な年越しだろうか。カントダウンなんて、特にやらなくてはいけない訳ではないはずなのに、なんだか悔しい気持ちがあるにはある。 今年は自分の年だなんて大はしゃぎする蔵人の声を聞いていたら、なんだか途端に面倒になってきた。神社に向かう足をピタリと止めると、ぬいぐるみたちが私を見上げた。 「…かえろうか。」 ここを右に曲がれば私の家がある。暖房をいれればきっと暖かいはずだ。そんな道を前にして、浦原商店に戻る気はしなかった。 幸い今ここで自宅に帰ってもひとりぼっちにはならないし。 「きみたち泊まっていってくれて構わないんだよ」 そう言うとそれぞれで顔をみあわせて、こぼすのだ。 「仕方のない人ですねえ」 「泊まって”あげる”わよ、かわいそうだから!」 「…お邪魔する」 浦原さんごめんなさい。きっとテッサイさんが作ってくれるよ。 *** 今年もよろしくね。 |