「わたしマスク萌えなんだよね」


ぽつりといきなり呟いてみれば、きょとんとした後すぐににやりとして、


「なあに、俺に萌えてるってこと?」
「そういうことだよ」
「あら、あっさり認めんのね」


つまんなーい、と彼はすぐに本に目を落とした。なんですか、照れて否定でもすりゃ良かったんでしょうか。


「だからカカシは、マスクはずしちゃ駄目だよ!」


びし、とマスクを指差せばぐいとお手々をどかされた。(違うよ顔を指差したんじゃなくてあくまでマスクだよ)


「言われなくても大半つけっぱでしょ」
「…そういやそうだったね」


会話終了。かと思いきやいきなりカカシが「あ」なんてこぼす。


「でもさ」


いつの間にかすごく近かったカカシのお顔にびっくりする。マスク越しでも分かる整った輪郭に惚れ惚れする。やっぱり、かっこいい。(マスクなカカシ。)


「ちゅーしたいんだけど、」


物欲しげなに見つめてくる目に私もやっぱり勝てなくて、仕方ないのでそっと顔を近づけた。


「…え〜…」


軽く触れるだけして放してやれば聞こえる不服そうな声。どうやら何か不服な様子でございます。


「マスク越しなの?」


やはり指摘されるはそこだった。私からちゅーなんて滅多にないのに、なんて贅沢な男だろうか。
そしてちょっと不機嫌な表情を見せる。大の男がそんなことで、なんてかわいらしさを感じる。私といえば少しの優越感にそんなに悪くない気分。


「おまえはしたくないワケ?」
「カカシはそんなに私とちゅーしたいの?」
「今は俺が聞いてるんだけど」


これはちょっと怒っている気がする。いじめすぎたかと反省もしないでもないのだけれど、私が優位に立ってる状況なんかすごく珍しいことだから、楽しいかも。


「したい、かな」
「へえ、どのくらい?」


ねだるように言ってみれば、気を良くしたのか聞き返してくる。なんて単純な男!子どもみたい。


「どのくらいってどう表せばいいの?」
「態度かな」


語尾に音符でもつきそうなくらいご機嫌に笑顔で私を追い詰める。顔がぐんぐん近付いてくるんですが、流石にちょっと恥ずかしいよおにーさん。


「カカシはマスクしてなくてもかっこいいよ」


そう言って口元の布をずらしてあげたら、満足そうに顔を更に近付けた。うん、まあ、ゼロ距離なんだけれども。


「だから私の前で以外見せちゃだめだよ」




***
(で結局、マスク萌えなの独占欲なの)
(え、ど、どっちも…?)
(ちょっと喜んだ俺が馬鹿だった)