吐く息は、白い。首に巻いたマフラーで口元を覆えば、顔面はそれほど風の被害を受けない。コンビニの窓ガラスに映った自分の姿を見て、くすりと笑ってしまった。 「之芭みたい。」 そういえば最近は放課後はすぐにバイト、という日が続いていて全然会えていない。思い出してしまうと気になるもので、一気に寂しさがこみ上げてきた。会いたい、かも。頭の中に憶えている限りのスケジュールを並べたが真っ白な日付が見えない。珍しい、こんなに多忙な事が今までにあっただろうか。 ひとつ、ため息が白く消えた。 「幸せが逃げる」 「いま幸せじゃないもん…」 「何かあったの?」 それはもうとても驚いた。会いたい気持ちが幻覚を生み出したかと思ったが、生憎そんな便利な能力は持ち合わせていない。私は人間だ。だけどこいつは人じゃない。心配そうな目で私を見ている、之芭。 「なんでそこにいるの」 「迎えに来た」 「なんで?」 「…寒いから」 なんとなく繋がらない答えと一緒に手を伸ばす。かじかんだ指先はまっすぐに体温を求めた。 「でも、これであったかい」 だから今日は、ゆっくり歩いて帰りませんか。 *** 前言撤回、わたしはこんなにも幸せだ |