「之芭!」


彼の名前を呼べば彼が振り返るということは大概当たり前の事なのだけど、わたしの声に応えてくれたと喜んでいる自分がいて、そんなちっぽけなことすら幸せで仕様がないなんて情けないなと思うのだけど、何故か涙腺がゆるんでしまって雫は頬を伝って、その涙に意味なんて全く感じられなくて自分でも少し呆れるなんて考えたときに、驚いた君が焦ってそのまま私を抱き締めてしまったのはきっと何も考えないで動いちゃったんだろうなと気付いたわたしは笑って、やっぱり無意識下で抱きしめ返して話したくないのでした。


「だいすき。」
「…俺も、だ」





***
ずっとそうしていてよ